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校長あいさつ

2009年11月02日
「ねえ ダニエル。ぼくは生まれてきてよかったのだろうか。」
 朝晩の冷え込みが、冬の到来を確実に告げています。早いもので今年もあと2ヵ月となりました。冬に向けての準備はお済みですか。幸いなことに、日本には四季があります。この季節の移り変わりの時期は実は大切な教育の場にもなります。冬支度をする家族の横で、季節が変わっていくことを自然に感じていきます。そして、それは日本人の四季にあわせた営みが昔から受け継がれてきていることや四季折々の日本独特の暮らし方が様々あるということなどにもふれるよい機会となります。
 季節にあった「衣・食・住」を体験の中で覚えていくのです。できれば、ご家族みんなで冬支度ができるといいなと思います。「お母さん、この服はどこへしまっておく?」「そこの洋服ダンスへお願いね。代わりにコートを出しておいて。」そんな会話が聞こえたならば冬の厳しさを超えた温かさを感じることができるのではないでしょうか。

 この間、読書週間があり1週間読み聞かせのお母さん方が来てくださいました。ありがたいことです。私もそのお仲間に入れさせていただいています。第1回目は6年生に今回は5年生の5クラスに出向きました。5、6年生に読む本は共通して「葉っぱのフレディ ―命の旅―」です。葉っぱに生まれたフレディが四季を通じて生きることの意味や命の価値、そして死というものを見つめていくお話です。冬が来てフレディは枯れ葉となって死んでいきます。しかし、フレディの命は土に還ってまた次の命を育む力になるのです。見えないところで命は生き続けているという永遠のテーマをもったこの本は私には心のバイブルのような存在です。

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 ・・・「ねえ ダニエル。ぼくは生まれてきてよかったのだろうか。」とフレディはたずねました。ダニエルは深くうなずきました。
 「ぼくらは春から冬までの間 ほんとうによく働いたし よく遊んだね。まわりには月や太陽や星がいた。雨や風もいた。人間に木かげを作ったり 秋には鮮やかに紅葉してみんなの目を楽しませたりもしたよね。それはどんなに 楽しかったことだろう。それはどんなに 幸せだったことだろう。」その日の夕暮れ 金色の光の中を ダニエルはえだをはなれていきました。・・・ (葉っぱのフレディより)
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 読み終わった後、子どもたちに少しだけ話をします。「君たちが生まれてきたとき、周りの人たちはどんなに幸せな気持ちになったことか、君たちが明るく元気に育っていく姿を見てどんなに喜びを感じているか、君たちの存在は、人に幸せを与えていることを忘れないでください。」と。
 無駄な命など一つもないのです。「人生はどれだけ生きたかではなく、どう生きたかが大切だ」と障害をもつ息子に語った父親がいました。それは、私たちが終焉を迎えるときに問われることでもあるのです。

 11月、鮮やかな紅葉の中でたくさんのフレディの仲間たちが命を輝かせています。
 校長  豊田 公敏
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