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校長あいさつ

2011年09月01日
焦らずに 一歩一歩 着実に
37日間の夏休みが終わりました。今年はどんな夏休みになりましたか。東北の大災害から半年近くが経とうとしています。皆さんの中には、この休みを利用して被災地に足を運んだ方もいるのではないでしょうか。テレビを通してみる惨状と、実際に目にする生の現場の様子では大きくその印象も違っているのではないでしょうか。まだまだこれからですね。
 甲子園の高校野球でも、北東北で開催された高校総体でも「がんばろう東北、がんばろう日本」が当たり前のようにスローガンになっていました。その中でこれから日本の復興を担っていくであろう若者たちが、被災した人々、被災した故郷を思いながら一生懸命戦っている姿は、多くの人々に「もう一度がんばってみよう」という意欲と勇気を与えることができたのではないかと信じます。

先日スポーツジャーナリストの増田明美さんの記事を朝日新聞のスタイルという小雑誌の中で目にしました。生き方に通じるとてもいい話だったのでとり上げてみたいと思います。
彼女は中学3年で陸上800メートルの千葉県記録を更新し、以後引退するまで日本最高記録を12回、世界最高記録を2回、中・長距離(マラソン)の種目で更新した偉大なランナーです。しかし、ロス五輪で途中棄権、引退を決意した大阪国際マラソンでまたもや途中棄権。「本番に弱い、引き際が悪いというイメージがついて、監督やコーチの話もない。」(本人談)孤高の天才ランナーにも多くの苦難があったのだと改めて知りました。現役の頃の彼女にはどこか寂しげな雰囲気がありましたが、様々な葛藤の中で苦しんでいたのだと納得しました。

増田明美さんのマラソン中継の解説を聞いていると選手一人ひとりに対する情報が大変豊富で、しかも一人ひとりに掛ける言葉に温かみがあって私は好感をもって聞いています。
「選手を応援する家族や友だちを心配させるようなことは言いたくない。何よりも現場に足を運んで選手のハードな練習を目にすると、むしろ褒めても褒めても、褒め足りないくらいです。」増田さんの人を想う、人を気遣う心がこの言葉から強く伝わってきます。きっと現役時代の多くの挫折が、彼女の中に人間としての優しさと後輩たちを支えていこうとする思いやりの心が培われたのかなと推測します。

多くの個性をもった子どもたちの集まりである学校では、自分だけが思った通りの生活を送るということはあり得ません。自分とは違う個性をもった友だちとの付き合い方に悩むこともあるでしょう、徒競走で負けることも、宿泊訓練で失敗することも、無論テストで×をもらうことも。でも、それら子どもながらの挫折や失敗は、先を考えるならば人としての在り方や人と接する術を学んでいることにもなっているのです。
目先のことばかりにとらわれず、少し先の子どもの姿を思いながら今を見てあげられたらいいなと思います。

「マラソンは遠い目標に向かって地道な努力を積み重ねますが、人生も同じ。自分の歩幅で一歩ずつ進んでいくとよい結果につながると思います。たとえ順調ではない時でも、目の前の風景を楽しむ心をもっていたいですね。」増田さんの言葉の中に多くの示唆が隠れています。
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